2011年09月17日

安藤美姫のソチ

世界陸上競技選手権大会が韓国で2011年8月27日から9月4日まで開催された。
競技はほぼ生放送に近く、TVを見ながら1人、揺れる心の中で思い巡らせていた。

ウサイン・ボルトやアリソン・フェリックスのような注目選手に話題が集中するのは当然のことで
キャスターもそういう選手の名前を何度も口にすることは仕方ない。
中継を盛り上げるのもキャスターの仕事だからだ。
けれど、それにも限度がある。「何度も名前をいう」のは我慢できるが
「何度も何度も何度も名前をいう」という執拗なまでの肩入れの仕方は不愉快だ。
キャスターも人間である以上贔屓の選手もいるだろう。チラッと心情が出てしまう分には
むしろ人間味が感じられて、血の通った中継を楽しめる、というものだ。
がしかし、世界陸上の放送は不快でしかなかった。

女子200m決勝ではカーメリタ・ジーターとアリソン・フェリックス。
さらにはベロニカ・キャンベル=ブラウン。
有力な選手が揃った。否応なしに興奮度も高まっていく。
誰もフライングしない。気持ち良くゴールを駆け抜けていく美しい女豹たち。
勝ったのはキャンベル=ブラウン。
五輪ではこの種目を連覇している彼女だが世界陸上では初めての金だった。
私はこのベロニカ・キャンベル=ブラウンをここ数年注目し続け、応援してきた。
あまり感情を表に出さない彼女が暫くの間感激のあまり立てないでいる光景に
見ているこちらも涙腺が崩壊しそうになっていた。ところが。
トラックの興奮から中継ブースに画面が切り替わり、そこに映し出されたのは、
なんとキャスターのガックリうな垂れた画だったのだ。
「キャンベルが勝って悪かったの?!」

選手は1人だけではない。
キャスターを務めた織田裕二氏。彼が肩入れをし名前を連呼されていたアリソン・フェリックス。
私は彼等に怒っているのではない。
こういう放送の仕方に憤りを感じるのだ。

選手は1人だけではない。
フィギュアスケートの某 TV 中継でも同じことが、数年続いている。
なぜ選手1人に注目を集めさせ、他の選手を蔑ろにするのか。
どうして1人だけに視聴者の興味を誘導するかのような放送しかしないのか。
国民的アイドルスケーターを創り上げて、一方では
他の選手に対しての敬意を何処かに忘れてきたかのような有様だ。

これは TV 放送だけではない。
競技のあった翌日の新聞を飾るのは優勝した選手ではなかった。
ニワカファン、浮遊物のような視聴者がまんまと誘導されて「この選手を応援しよう」と
必要以上に持ち上げられた国民のアイドル選手が無理やり一面を占拠している。
「勝ったのは誰か。日本がこんな時にセンターポールに日の丸を揚げたのは誰?」

選手は1人だけではない。
安藤美姫選手がいなければ日本女子シングルは成り立たない。
主要大会の出場枠を確保するためにも。否。そんなことだけではないだろう。だって。
安藤選手がいなければ何も。何っにも始まらないじゃないか。



冒頭「揺れる心の中」と記したのには理由がある。
そんなことは安藤選手のファンであれば誰でもが解ることか。。。
8月の半ばあたりから噴出し始めた、インタビューで語った「これから」のこと。
掲示板では安藤選手の決断を支持します的な物分かりのいい書き込みもチラホラ見られ
私はもう気が気ではない。

安藤ファンの多くは彼女の言動を常に受け入れ、支持し、運命を共有しますとばかりに
彼女の全てに同調しようとする。なぜか。
ご贔屓の選手に嫌われたくないから。無視されたくないから。恐らくはそんなところだろう。
だがそれよりも安藤選手のほうが応援するファンの気持ちに寄り添い、
ファンと共に今日までを過ごしてきたからだとも思う。
試合会場で応援バナーに励まされた。手紙のひと言に力をもらった。
こんな風にファンの気持ちに応え、感謝してくれる彼女と同じ方を向いていたい、
そう考えるのが自然なことなのだろう。

誰だって「好きな人」に嫌われたくはない。私も「大好きな美姫ちゃん」に
「嫌なファン。こんな人から応援されなくていい」などと思われたくはないし、
安藤選手と同じ方向を見ていたいと思ってきた。
だいいち、応援しているというだけの、いちファンが何を進言できるものでもないし
踏み込むことの許されない領域に首を突っ込むことなど出来るはずもない。
勝手に好きになって勝手に応援して。それ以上に此方側から何を望むというのだ。
それなのに。。。私は正気か。。。
嫌われてもいい。どうしても、これだけは言いたい。

現役を続行して欲しい。

ソチ五輪を目指すと公言していた安藤選手が一転「これからのことを考えたい」と発言して以来、
何故? 彼女の周囲で何が起こっているの? と頭の中は整理がつかず嫌な胸騒ぎに苛まれて、
情報は断片的で混乱を招くばかり。事実はフィルターがかけられて解りようもない。
仮に安藤選手の周囲で起きた問題の詳細を把握することが出来たとしても
一般人が力になれることなど何もないことだけは解かっている。どんなに歯痒くても。
それを理解した上で、私は諦めないことを言いたい。
部外者が事情も解からずに傍迷惑なシュプレヒコールを起こしているのと同じで
頭の悪い人間の一方的な懇願の仕方でしかないかもしれないが、
どうしても、これだけは譲れない。現役続行をと。

こんなブログ記事が公開されては、安藤選手とそのご家族を苦しめることになりはしないか、
躊躇う気持ちと、禁を犯してでも伝えたい気持ちとが今も交錯する。
難しい問題を抱えて日々心を痛めているであろう安藤選手へ。
愛するあなたに反逆してでも伝える意味があるのかと恐れおののきながらも
敢えて発信する。
「ソチを目指して欲しい」



バンクーバー五輪で逃したメダル。
安藤選手ならば掴むことも可能だったはずだ。
大きなミスなく終えたこと、収穫も得られたことに当の本人が満足していても
私は悔しさが長く尾をひいた。正直に言うと今でも納得ができないでいる。
そんな気持ちを前向きにしてくれたのが彼女が自ら発したソチを目指すという言葉だった。

あの悔しかったバンクーバーから既に1 年 7ヶ月が過ぎ
ソチまで残るは2 年 5ヶ月と、思いのほか時間は早く過ぎていった。

昨季のFSで後半に5つのジャンプを跳んでみせた並外れた身体能力をもつ安藤選手。
既往選手と比べる必要などなく、とび抜けたポテンシャルの持ち主は2 年 5ヶ月後も
その能力を維持できるだろう。
難度の高い3 回転ー3 回転を成功させるために3-3-3をエクササイズとして取り入れたのも
4 回転を練習だけで終わらせたくないと言ったのも決して過去のことだとは思えない。
逸材がその能力を最大限に発揮しないまま終焉を迎えるなど、
断じてあってはならないと言いたい。

今季を休暇にしたこともソチを見据えてのことと理解していた。
疲れた心身のリフレッシュに充てる、絶好の機会だと。
しっかり右肩のケアもできるし、何よりソチへ向けての充電という意味でも
いい機会だと思っていた。

五輪と世界選手権のような大切な大会での「メダル獲り」ということで言えば
05〜06の五輪シーズンから明暗が交互にきているから1度ノーカウントのシーズンを
挟むのもいいとすら考えていたくらいだ。
そうすれば2012〜2013の復帰シーズンは試合の感覚を取り戻すための位置づけで、
表彰台に近い順位でさえあればいいし、
2013〜2014の五輪シーズンを明るい期待をもって迎えられる。

今季の休みをけっして無駄にして欲しくはない。
オフの安藤選手はとびきりチャーミングだし女性としても恐ろしく魅力的で、
美しいだけではない可愛らしさ満載の「美姫ちゃん」が大好きだけれど、
真剣勝負の競技の世界で挑戦し続け、成長を遂げる「安藤選手」が1番好きだ。



選手は1人だけではない。
カーメリタ・ジーター。アリソン・フェリックス。
ベロニカ・キャンベル=ブラウンがいるように。
キム・ヨナ。カロリーナ・コストナー。アリョーナ・レオノワ。レイチェル・フラット。
長洲未来。クセーニャ・マカロワ。さらには日本の浅田真央。村上佳菜子。鈴木明子。
そして安藤美姫がいる。
それぞれが、個のもつ魅力を存分に発揮するからフィギュアスケートの世界が成り立つ。
と同時に厳しい世界のなか、五輪に出場できる選手は限られている。
表彰台を狙える選手はもっと限られている。
安藤選手はスケートの神様から選ばれた精鋭中の精鋭、数少ない本物の1人なのだ。

表彰台を狙う。
安藤選手にとって、それは重要なことではないとファンのみんなが知っている。

最近のインタビュー記事で門奈裕子コーチが彼女のことを
「いつでも先生にべったりのタイプ。
 寂しがりやだから1人で練習することもできない。
 見ててほしがる。かまってほしがる」
と話していた。この言葉どおり、おそらく安藤選手は甘えん坊で寂しがりや、
誰かと一緒にいたい気持ちが強いのだろうと思う。
自分自身の競争心を満足させるということよりも誰かのために滑ることに
価値を見出すのではないかと想像する。

さて。ここからは私がこのブログを始めてから今まで、言いたくても言えなかったことだ。
私は嫌われ者になることを進んでしよう。
たとえ嫌がられても安藤選手の心の琴線を刺激できたら、それで構わないと思う。

これは私の勝手な想像にすぎないかもしれないが。

安藤選手は勝負にこだわらない、スコアや順位やメダルに執着しない、
いい演技だったねと褒めてもらいたい、自分に納得ができればいい。
誰かの心に残る演技がしたい。
それが彼女の本心だと信じていいと思う。
だが本心とは違う気持ち、心の奥底で誰も気づかない、
自分自身ですら気づかない潜在意識のなかに埋もれて隠された本当の、本当の気持ちが
あるのではないだろか。

いつだったかインタビューで
「真央が大人になったら勝てる人はいないんじゃないかな」と口にしていた。
浅田選手の実力を認めるという一方で瞳の奥の寂しげな、
何ともやりきれない想いを彼女のなかに感じた。

この時から無意識のうちに勝負をすることが怖くなったのではないだろうか。
競争するということを避けるようになってしまったのではないだろうか。
気づかないうちに心の奥底に沈めてしまった選手としての闘争心、
本来ならば持っているはずの誇りを置き去りにしてしまったように。

元より寂しがりで誰かと一緒、誰かのために。という優しい気性は
私こそが1番よという自尊心の強い世界、激しい競争の世界では
辛くて耐えられなかったのかもしれない。
けれど、それでは勿体無い。
優しい気性は変える必要などないが、稀有な存在、
数十年に1人の逸材ともいえるポテンシャルをこのまま眠らせてはならない。
誰もが羨むほどの身体能力を遺憾なく出し尽くすまで、
いや、さらなる成長、進化した安藤美姫を惜しみなく披露して欲しいと切に望む。

ただこうして部外者が言うは簡単、
当事者である安藤選手とご家族の心労は想像をはるかに越えて
笑えない状況下にあるのかもしれない。競技を続けていくには困難で、
打破していくにも先の見えない暗闇の中にあるのかもしれない。

「1人でも力になってくれる人がいる限りやっていく」
その、1人の救世主が現れることを願ってやまないし、諦めてほしくない。

いつからか置き去りにしてきた誇りと、封印された闘争心を胸に抱いた、
私こそが1番よ。そんな安藤選手に会ってみたいのだ。
安藤美姫選手。決して忘れてはならない。

あなたこそが世界 NO.1 のスケーターだ。


posted by マキティ at 00:18| Comment(24) | TrackBack(0) | 安藤美姫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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