2009年03月31日

安藤美姫の不死鳥伝説

ここ 1 ヶ月、何に焦点を絞って記事にすればいいのか迷いに迷った。
頭の中のキーワードは、次から次へと浮かんでは消えの繰り返しで、
結局、前回から今回まで大きく間隔が空いてしまった。
確信がないから決めかねる、迷いの構図にすっぽりハマってしまった 1 ヶ月だった。


2009 世界選手権( LA 開催 )女子 SP は日本時間 28 日早朝に行われた。
「 The Chairman's Waltz 」(映画「 SAYURI 」より)
冒頭の 3 Lz+3 Lo に手痛いダウングレードをとられるも、
その他のエレメンツには取りこぼしがなく、
チェンジフット・コンビネーションスピン、
スパイラルでは Lv 4 というほぼ完璧な演技。
なかでもステップは今や云い尽された感もあるが、
儚くも懸命に生きる花の芯の強さを、
女性らしい柔らかな腕の使い方と表情で情感たっぷりと表現してみせた。
静かな、少し暗いイメージさえある「 The Chairman's Waltz 」を
ここまで見事に表現できるのは安藤選手をおいて他にないだろう。

内なるものを表現するには、人としてそれ相当の経験がなければ難しいものだ。
技術面で壁に当たったり、思うように評価されないことくらいで、
外野は簡単に「試練」などと大袈裟に云うが、
そんなことはアスリートなら誰でも、多かれ少なかれ味わう洗礼のようなものだ。
だが本当の「試練」というのは、大舞台での惨敗や、
選手生命の存続に影響を及ぼすような大きな怪我などをいう。
そんな試練を、慟哭の暗い闇を、幾度となく乗り越えてきた安藤選手だからこそ
表現し得た「 The Chairman's Waltz 」であったと思う。
滑り終えた安藤選手の気品に満ちた穏やかな横顔は最高に美しかった。

翌 29 日(日本時間、午前)FS 。
前日の SP で 4 位につけた安藤選手の PG は「交響曲第 3 番オルガン付き」
3 Lo が回転不足になった以外は、すべてのジャンプを完璧にこなし、
スピン、スパイラル、ステップも Lv 3 〜Lv 4 を並べるノーミスの演技。
SP 同様、ステップでの気迫のこもった表情に引き込まれた。
何よりもジャンプには安定感が感じられた。
ヴァイオリンの旋律にのって、荘厳な楽曲に負けない圧巻の演技は、
最後のポーズをとり終えた時、
昨年の悔しかった想いを振り払うように少し涙を溜めた目で笑顔になった。
本当に嬉しそうな笑顔だった。

当初予定された 2 連続 3 回転と 4 回転は回避したが、
PCS では 5 項目中、3 項目で 8 点台という高い評価を得て、
FS の SCORE を 126.26 とし SB を出した。
結果、190.38 となり銅メダルを獲得し、表彰台に上ることができた。
今大会では来季のオリンピック出場枠がかかっていたのだが、
安藤選手は日本人代表としての重責を果たし、バンクーバーへの「 3 」を確保した。

さて。
今シーズン、改めてつくづく感じたことは PG における楽曲の重要性だ。
SP でいうとキム・ヨナ選手の「死の舞踏」
FS であれば浅田選手の「仮面舞踏会」などは、面白い CHOICE であったといえる。
音楽だけでも聴き応えがあり、観衆を味方につける。
judge に対してもまた然りで、演技だけではなく
楽曲もまた PG というひとつのパッケージで見た場合、非常に大切なのだ。
来季の安藤選手の PG がどうなるかが、興味深いところだが、
「 Bolero 」が今シーズンの EX 、ショーで見納めとなってしまうのは、
たいへん残念で、もったいないように思えてならない。


安藤選手が今季、大崩れすることなく、
GP ファイナルを除いた試合すべてで表彰台に立てたのは、
「日常の感情の浮き沈みをスケートに出さないこと」を心がけたからだという。
よく、心の弱さがリンクの上で出てしまうと口にしていたが、
感情を抑えて、心をコントロールできたから、安定した成績も残せたというのだ。
だが、こうも云っていた。
「滑っていて何も感じない」
「自分の心が見えて、それを演技にするのが生きがい」

私はこの言葉を聞いてから、ずっと考えていた。
安藤選手は今もまだ暗闇の中で、もがいているのではないかと。
「光」はまだ遠くにしか見えないのではないかと。

人は迷う。
迷いの中に光を見つけ出そうと懸命にもがく。もがき苦しむからこそ強く成長する。
この先、「迷いのない 1 年にしたい」とつぶやいた瞳の奥に、
不安と向き合いながら、闘いに挑む安藤選手の本当の強さを見たような気がした。


私は今季を、どん底から這い上がる「リハビリシーズン」と勝手ながら位置付けした。
そして、4 回転の練習が報われることと、
大きな怪我をせず無事にシーズンを過ごせることを願った。
結果、GPF でダウングレードをとられたとはいえ 4 回転を見事に着氷してみせた。
怪我はなかったとは残念ながら云えないが、
それに負けないトレーニングの成果もあった。

正念場である来シーズン。
さらに成長し続ける安藤選手の本物の「不死鳥伝説」を見たい。


posted by マキティ at 00:02| Comment(14) | TrackBack(0) | 安藤美姫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マキティさん☆
久々のブログ、嬉しいです。
色々とお考えだったのですね。

とにかく、美姫ちゃんの今回は非常に価値あるものだったなぁ、とつくづく思います。
もちろん山は登り中ですが、より高い山へ向かって一山(今までいくつもあっても)は超えたと言うか、何かを悟ったようにも感じました。
特にインタビューで応えていた「スケートしかない」というこの言葉は、行き着くところまで来たんだなぁ、とハッとさせられるものがありました。

バンクーバー、バンクーバーと周りはワサワサと五月蝿くなってきた感がありますが、
美姫ちゃんは美姫ちゃんの流れの中でこれからも成長し続けるんでしょうね。
それがとっても楽しみです。
Posted by 如月 at 2009年03月31日 00:40
マキティさん、久しぶりです^^
もう本当に凄かったですね、今回のワールド。美姫ちゃん以外にも私が大好きな選手たちが良い演技をしてくれて嬉しかったです。

今回の美姫ちゃんは演技やスケートのスキルもそうだけど、リンクの上での存在感自体がすばらしかったです。私がみてきた美姫ちゃんの中で一番光り輝いてたかも。

迷いの中に光を見つけ出そうと懸命にもがく。もがき苦しむからこそ強く成長する。

この言葉がすごく心に響きました。
そう、美姫ちゃんの強いところは試合でいつも良い結果をのこすことよりも、自分の弱いところと全面に向き合ってさらに上に目指して頑張るところだと思います。
このワールドで良い結果、しかもショートとフリー共に会場いっぱいのスタオベも貰えて終えることが出来て本当に嬉しい限りです。

ところで美姫ちゃんにはやっぱりヴァイオリンの演奏がすごく似合いますね。メンデルスゾーンの協奏曲もそうだったけど今回のオルガン付きは見事なものでした。

それではまた遊びにきますのでよろしくおねがいします。 ^^
Posted by Yoli at 2009年03月31日 10:06
マキティさんも復活!? 本当に最高の気分ですね。安藤選手は人を幸せな気分にさせる才能を持っているスケーターですね。賞賛の声は皆さんが沢山伝えて下さっているので、私がこれまで溜め込んでいた思いを叫ばさせて下さい。
全日本で弱い!?泣き虫!?と言ったのは誰だぁ? 2年振りのメダル獲得しても泣かないぞー!4回転、3−3回転跳んでなくてもこの結果はどうだ!!これからも五輪代表になるのは難しい?3枠獲得出来たのは誰のおかげだぁ!!世界選手権銅メダリストに失礼でしょう!!神様の演出は最高だけどちょっと試練与え過ぎ。真央ちゃんも頑張れ〜。安藤選手の試練の数々に比べたら全然大丈夫だ〜。ありがとう!! ハァ〜スッキリ(笑)。暴言失礼致しました。マキティさんのブログにそぐわない内容なら削除お願いします。
Posted by char at 2009年03月31日 18:16
お久しぶりです。
最後にコメントさせて頂いたのはもうずいぶん前になるかと思いますが覚えていらっしゃいますでしょうか(^^ゞ
今回美姫さんは本当に素晴らしい演技を見せて下さいましたね。
美姫さんが世界選手権前に掲げられていた三枠と表彰台に乗ること両方の目標が達成されて嬉しく思います。
私もボレロがこれで見納めになってしまうのは残念に思います。
来シーズンも何らかの形で続行して頂けたら嬉しいですね。
Posted by ゆみえ at 2009年03月31日 18:50
美姫さん、早くアメリカに戻りたいそうです。
「光」、きっと掴みかけてる実感があるのでしょう(^^) 頼もしい!

 オリンピックでピークを持って来る為には、あまり急ぎすぎても・・・。 
 でも、出場する為には全日本で素晴らしい演技をしなければならない・・・。 
 モロゾフコーチの舵取り、ファンとしては「頼んだぞ!」という気持ちです。(余計な邪魔が入らない事を祈ります(笑))

 コーチで思い出したのですが、フリーの6分間練習の前、早く氷に飛び出したくてウズウズしている美姫さんにモロゾフコーチが「まだ待て」と言っている様に見えた・・・、とバックステージで国分さんが言ってましたね。
 コレを聞いて「競走馬かよ!」って一人TVにつっこんでしまいました(^^;)
 でも、モロゾフコーチに「待て!」をされてる美姫さん、ちょっと見てみたいです(笑) この二人の師弟関係、微笑ましくて大好きです。(岡ひろみと宗方コーチみたい)

 そして、バックステージの国分さん・・・、はっきり言って「無い!!!」
 フジさん、百歩譲ってアナウンサーにして下さいって感じです。 選手の皆さん、流石に「えっ?」って顔をしている様に見えたのですが・・・。 
 スケ連はトップ選手に口出ししなくていいから、いい加減こういう部分のフォローを積極的にやっていってほしいです。 本当に「的外れ」ですよね! またモロゾフに怒られちゃうぞ!

 マキティさん、今回も、素敵な記事ありがとうございました! そして、お疲れ様でしたm(_ _)m

あっ、追伸
色んな所で書き込んでますが、今日は小林十市さん「ボレロ指導」情報があって、一人でなんだか大興奮です!  美姫さん、「モダンの神・ベジャール」の世界に十市さんを通して触れていたんですね(TT) すごいよミキティ〜!
Posted by キャリー at 2009年04月01日 11:13
マキティさん、こんばんは。
美姫さんはここ1年で、持って生まれた輝きに加え、自ら磨く輝きの深さをも身につけられたように感られてなりません。
フィギュアスケートの面白さに気付いた、というようなことを言われたのを聞いて、たぶん、五輪のあとも最前線に居続けてくださるようなイメージが強くなりました。
五輪は次シーズンのプログラムで締めくくって、トリノの世界選手権でカルメンを見られるといいなぁ・・。
Posted by nefertiti at 2009年04月03日 02:38
マキティさん、こんばんは。

マキティさんのブログ再開で、こちらもしっかり盛況ですねえ^^
再開といえば、あのmikittyfanさんのブログも臨時オープンしてますね。
やはり美姫ちゃんの快演にじっとしていられなくなったんでしょうね。コメント入れられないのがちょっと残念ですけど。

美姫ちゃん、今や、すっかり気持ちはポジティブになっているみたいで「ゆっくり休みたい」なんてコメントはどこにも出てないですね。
「早くアメリカに戻って練習再開したい」とか、「WTTでは4回転やって勝ちたい」とか・・・・すんごいエネルギッシュ^^;
なんか吹っ切れたっていうか、
こんなイケイケのコメントが聞けるのはシニアに上がってから初めてのような気がします。
そうとくれば、こっちもガンガン行きますよ!美姫ちゃんの向かう先にはどこまでもついてくぜ!ってとことです。

おもしろいもので、ワールドの後は私も毎日がポジティブで、なんかエネルギーを自分で感じます。
これも美姫ちゃん効果なんだろうなあ。
すごいなあ、美姫パワー!

では、また。


Go! Miki
Posted by Go! Miki at 2009年04月03日 22:59
如月さん、こんにちは。
ご心配をおかけして申しわけありませんでした。私も少しづつ復活です。
美姫ちゃん、強くなりましたね。
>美姫ちゃんの流れの中で成長し続ける。
これからもその成長を見守り、
何かしら支えになれるような YELL を送りたいと思います。

Yoli さん、こんにちは。
自分の弱さと真剣に向き合うことのできる人は、
必ず強くなれる人だと思います。
凡人は弱点を認めたがらず、自分の心から逃げてしまいがちですが、
美姫ちゃんは逃げずに、自分を見つめながら頑張っています。
なかなか出来ることではないですよね。

char さん、こんにちは。
char さんが溜め込んでいた言葉、
「そうだそうだ、その通り」と思いながら楽しく拝見させていただきました。
おかげで私もスッキリしました。
上手く表現できなかったので、こちらの方こそありがとうございます!
何度も読み返しては、ニンマリしています(笑)

ゆみえさん、こんにちは。
表彰台と 3 枠獲得、本当に良かったです。
「 Bolero 」は素晴らしい PG なので、来季以降も見られるといいのですが、
美姫ちゃんには、まだ他にも挑戦してほしいと思う楽曲もあったりします。
ファンというのは、欲張りなものです(笑)

キャリーさん、こんにちは。
今まで何度か「辞めたい」と口にされていた美姫ちゃんが、
早くアメリカで練習をしたいとコメントするようになったってことですよね。
嬉しい反面、肩や脚のケアは日本でじっくり施した方がいいのでは
と、心配したりもします。(心配性なんです私。歳かな)
それと、TV 中継には、もう呆れて笑ってしまいますよね。
お願いだからタレントは出さんといて〜(笑)

nefertiti さん、こんにちは。
仰るとおりだと思います。私もそう感じています。
持って生まれた素質でスケートをされてきた美姫ちゃんが、
意欲的にスケートに取りくみだした、というか
今までとは何かが違う、というか
いずれにしてもファンとしては、とても嬉しい言葉を聞くことができました。
身体のケアだけは怠らず、心はどんどん前を向いていってほしいですね。

Go! Miki さん、こんにちは。
mikittyfan さんのブログ、お気づきになられたのですね、さすがです!
なんかもう、あちこちで美姫ちゃんファンが活気づいていますが、
ビビリの私は、恐らくこの先もずっと、GOAL のその時まで、
美姫ちゃんの身体と心の心配ばっかりして過ごすんだろうなと思います。
来季こそ、こんな私がな〜んにも考えずに破顔一笑できますように!

コメント、ありがとうございました。

Posted by マキティ at 2009年04月06日 00:45
マキティさん、こんにちは。

ちょっと時間が経っちゃったけど、どうしても御礼を言いたい人がいます。

charさん、ありがとう!
間違いなく皆すっきり爽快な気分になったと思います。
言いたくてウズウズしていたことを、ズバッとストレートに叫ぶ爽快感!
だって、そういうことなんだもん。
charさん、すんばらしいっす^^

ありがとう!charさん!


Go! Miki
Posted by Go! Miki at 2009年04月10日 18:18
Go! Miki さん!

でしょ?!でしょ?!
すんごい気持ちいいコメントを char さんは
書き込んで下さいました。
あんなふうに楽しく、ちょっと可愛く表現していただけると、
本当にスッキリさせられますし、心が充足します。
改めて・・charさん、ありがとうございます!!
Posted by マキティ at 2009年04月10日 23:20
マキティさん、こんにちは。とても心穏やか春を過ごしております。これも安藤選手効果でしょうか(笑)。驚きました! 私のコメントに御礼だなんて!? Go!Mikiさん、こちらこそありがとうございます。とても嬉しく思います。そして皆さんと一喜一憂し共感できたりと、マキティさんのブログにもありがとうございます。応援する事で応援を貰っている安藤選手をバンクーバーまでしっかりと見届けたいと思います。皆さんと心一つに、願いも一つです。
Posted by char at 2009年04月13日 18:54
char さん、こんにちは。
美姫ちゃんが充実した日々を過ごされていると、
私達ファンも心穏やかな日々をおくれますね。
ホントに美姫ちゃんの効果は絶大です!

嬉しそうに幸せそうに笑っている美姫ちゃんが、
私達の幸せの象徴ですもの!
Posted by マキティ at 2009年04月13日 19:10
フィギュアの規定改正で「回転不足の減点が緩和」されるそうです。(以下、引用)

国際スケート連盟ISUがバンクーバー冬季五輪が開催される2009−10年シーズンのフィギュア規定を改正し、ジャンプの回転不足による減点を緩和したことが17日、分かった。 ISUの平松純子技術委員は、4回転ジャンプや浅田真央(中京大)が跳ぶトリプルアクセル(3回転半)、2連続3回転など「難しい技への挑戦を勇気づけ、評価する改正」としている。 回転不足のジャンプは、ジャッジによる出来栄えの評価で必ず減点対象となっていたが、来季からは加点や減点の裁量をジャッジに委ねる。 平松委員は「挑戦しても回転不足となれば基礎点が下がる上に、減点される二重のマイナスがなくなる」と説明した。(引用終わり)

回転不足による二重減点に悩まされきた安藤選手には朗報です。 4回転サルコウも挑戦しやすくなりますね。
Posted by もえおじ at 2009年04月18日 09:39
もえおじさん、こんにちは。

BIG NEWS が昨夜、掲示板を駆け巡りましたね。
高難度のジャンプを跳ぶ選手に、挑戦しがいのある改正は歓迎です。
来季といわず、今日からそうしていただきたいです(^o^)
Posted by マキティ at 2009年04月18日 10:33
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。