2009年08月15日

HACHI 約束の犬

来年か再来年には TV で放映されるだろうから、その時でいいと思っていた。
予告編だけで泣きに泣いた話を映画館まで足を運んで観る、
などという勇気のいることはとても出来ないと思っていた。
「 HACHI 約束の犬」
今週はじめ、 劇場で鑑賞することになろうとは、
我ながら、思いがけぬ行動をとったものだと感心している。

1987 年に公開された「ハチ公物語」は、
忠犬と呼ばれた秋田犬(あきたいぬ)ハチの物悲しい姿をかわいそうに思ったのか、
ポロポロ泣いていた息子に少々気をとられた感もあったが、
物語が淡々と描かれていたからこその、切々と胸に迫るものがあった。

「 HACHI 約束の犬」は、舞台を東京からアメリカ東部の架空の街へ移し、
時代設定も、現在より少し前の話としてつくられている。
かつて忠義心の象徴として描かれていたハチの姿は、
国境を越え時空を越え、さらに種を越え、家族愛のひとつとして描かれていた。

大学教授パーカーと彼に育てられたハチとの、愛と絆を軸に、
パーカーとその妻、娘との愛もふんだんに描かれているあたりは、
さすがにアメリカナイズされた、解かりやすく受け入れやすいものだった。


ベッドリッジ駅で迷っていた秋田犬の仔犬を保護する場面から物語りは始まる。
連れ帰った仔犬を拒む妻ケイトのために、飼い主を探すこととなるが、
ハチにボール遊びを教えようと夢中になって地面に這いつくばるパーカーの姿を見て、
ケイトの頑なな態度も一転、ようやく家族の一員となる。
ハチを可愛がるパーカーの優しさは、
先住犬を失い、それ以来閉ざされていたケイトの心も解してしまった。

パーカーは、時に困った行動をとるハチに振り回されながらも
細やかで、暖かい愛情をハチに注ぐ。
成長したハチは、大学勤めのパーカーを誰に教わるということもなく
毎日駅へ、送り迎えをするようになるのだった。
駅周辺の人々もそんな「ふたり」を優しい目で見守っていた。

ところがある朝ハチは、駅までの見送りを躊躇する。
怪訝に感じるパーカーだったが、しかたなく駅へと向かう。
少し遅れて、ボールをくわえたハチが駆け寄ってきた。
これまで何度試みても「とってこい」をしなかったハチが、
ボールを投げてくれ、というのだ。
初めての出来事に喜ぶパーカーだったが、
ハチはこの日、何かを感じていたのだろう。
家を出るときためらったのも、ボール遊びをして気を引こうとしたのも、
パーカーをこのまま行かせたくなかったからに違いない。
いつものように、夕方にはハチに出迎えてもらう、そんな笑顔を残して
パーカーを乗せた列車はゆっくりとハチから遠ざかっていった。
その日、午後 5 時を過ぎ辺りが暗くなって、一人ぽつんと待っていたハチを
連れ戻しにきたのはパーカーの娘夫婦だった。

パーカーが亡くなった後、娘の家族と暮らすことになったハチは、
その家を飛び出し、ベッドリッジ駅へとパーカーを迎えにいく。
何度季節が移り変わっても、
「パーカーに会いたい」ただその想いで待ち続けるハチの姿は、
10 年という長い歳月に、ほこりにまみれ、うす汚れた老犬となっていた。
ある寒い冬の夜、ハチは夢をみた。
目の前に懐かしい靴。見上げればずっとずっと会いたかったパーカーがいる。
「ハチ、ずいぶん待たせたな」
愛するパーカーと、やっと会えたのだった・・・。


と、ストーリーを思い出しながら振り返ってみたが、
映画を観て驚いたことがあった。 
わが家には私が溺愛する猫、「 RONNIE(ロニー)」がいる。
ロニーの母猫の名前は「レイラ」、父猫の名前は「ルーク」、
うんと遡って小学生の頃に飼っていた雑種犬の名は「ケン」だった。
ここへきて「 HACHI 約束の犬」の裏方の話になるが、
ハチを演じた秋田犬(あきたいぬ)の成犬は 3 頭いて、
それぞれの性格から場面に応じて、つかいわけていたそうだ。
そのうちの 1 頭の名前は「レイラ」、
劇中、パーカーの孫の名が「ロニー」、
ケイトが可愛がっていた先住犬の名が「ルーク」、
パーカーの友人は「ケン」、
ここまでくると、何だか遠い親戚、身近にあった話のような気がしてくる。
だからかどうかは別として、
「 HACHI〜」を観てから、どうにも切なくてしようがない。


昭和のはじめ、実存したハチには忠犬説に対し異論があるという。
主人の死後も渋谷駅に現れる本当の理由は、
駅前の焼き鳥屋からのご馳走が目当てだった、あるいは、
ハチを可愛がる駅周辺の人達から食べ物をもらうため、というのだ。
私はこの説に、云いたい。
ハチは主人である大学教授の上野英三郎氏が亡くなってから、
落ち着き先を転々とすることになるが、最終的には、
上野宅出入りの植木職人、小林菊三郎氏のもとへいくことになった。
安心して眠れるであろう寝床も、食べる物にも困ることはないはずだ。
それでも上野氏が帰ってくる時刻にわざわざ渋谷駅まで出向いたのは、
ハチが上野氏に会いたかったからに他ならない。

人間はどこへ行ってもそれなりに、その場その場で付き合いもでき、
愛する人も含めて大勢と関わりをもって生きていくが、犬は違う。
自分を可愛がってくれる人、
本当に愛してくれる人がたった一人いれば幸せなのだ。
例えその人がいなくなっても、
強い絆で結ばれた愛が、心の中にありさえすれば幸せなのかもしれない。
その幸せを忘れたくないから、いや、忘れられないから、
ハチはあの場所に居続けたのではないだろうか。
上野氏、パーカーの愛を受けとるために。


11 日は結婚記念日だったので、夫婦で「 HACHI〜」を鑑賞した。
暗い映画館から明るい照明のところまで出て、お互いの顔を見て吹きそうになった。
「どんだけ泣いた?!」
私のメイクは見るも無残なことになっていた。
                             (コメント欄に補足あり)
posted by マキティ at 23:50| Comment(7) | TrackBack(0) | 可愛いモノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マキティさん、はじめまして。
LOVEMIKIと申します。私は美姫ちゃんの大ファンです。
閉鎖したラウンジやM&Fには時々出没しておりまして、マキティさんやご主人のお名前は以前から存じ上げております。
マキティさんの美姫ちゃんへの愛情溢れる優しい文章が大好きで、いつも拝見させて頂いております。

そして私も大の犬好き!
今回、前回のマキティさんの「HACHI」のお話を読んだだけで、胸がいっぱいになってウルウルしてしまいました!
「映画館で鑑賞する勇気」ってわかります!
私もメディアで犬の姿を目にするだけでキュンとなるくらい弱いです!犬に関する映画やドラマは勇気がなく見れません。最後は必ず短すぎる一生の悲しい別れが描かれているから・・。我が家の13歳になる愛犬と重なり、息ができないくらい号泣してどうしよもない気持ちになるのをわかっています。
「HACHI」・・・いつか見れるかな。

結婚記念日にご夫婦で映画鑑賞って素敵ですね!
我が家なんて、結婚記念日くらいゴハン作りたくないとピザとるくらいですよ!


Posted by LOVEMIKI at 2009年08月20日 11:08
こんにちは。

このようにコメントするのは初めてのことなのですが、映画を見た感想がとても良くて、思わず書き込んでいます。

本当に、どんなに大切にしている相手でもあっという間に過ぎていく時間によって何時かは別れなくてはいけないから、今、会っている今をより大切にしよう!と思いました。

あと、学生だった頃にハチ公物語を一緒に観た彼女が、可愛そうだと声を出して泣いている周りの子供達以上に号泣しているのをみて微笑ましく思った懐かしい記憶も。

本当に、人や動物に対して誰もが温かい心で接して、その温もりの輪がどんどん広がれば好いですね。
Posted by チェキ at 2009年08月20日 13:44
LOVEMIKI さん、はじめまして。というより、こんにちは。
ラウンジや Miki Ando & Fans では美姫ちゃんファンのメンバーとしてお世話になっております。

「HACHI〜」泣きました。
観ようかどうしようかと、さんざん悩みましたが、勇気をだして良かったと思っています。
劇中、ハチを演じたワンちゃんの可愛らしいこと!
秋田犬は特別好きな犬種ではありませんでしたが、映画を観てすっかり気に入ってしまいました。
また、リチャード・ギアの優しい笑顔も最高でした。

このブログで映画のレビュー、というのはちょっと気がひけましたが、
LOVEMIKI さんにコメントを頂戴して、何か少し安堵しました。
これからも美姫ちゃんの応援を共に頑張りましょう、ありがとうございました。
Posted by マキティ at 2009年08月21日 19:35
チェキさん、こんにちは、コメントありがとうございます。

「ハチ公物語」をご覧になられたそうですが、
微笑ましくて素敵なエピソードですね。
何年経っても、当時の自分にタイムスリップしたように、
そのとき感じたものを鮮明に思い出すことができる・・・映画の素晴らしいところです。

それと、温かい心。本当に大切にしたいものですね。
Posted by マキティ at 2009年08月21日 19:36
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HACHI 約束の犬

ハチの忠犬説には異論もあったと記した。
ハチの胃に焼き鳥の串が数本あったことが、その説の根拠だとされる。
確かに焼き鳥等の食べ物を口にしたかったことも
渋谷駅にハチを向かわせたひとつの要因だったかもしれない。
けれど、ハチは飼い主であった上野英三郎氏が勤めていた東京大学農学部校門にも迎えに行っていたという。
これこそは純粋に、
上野氏に会いたくてハチが出向いたことになるのではないか。

犬や猫には当然のことながら悪意などというものはない。
人間は勝手に想像を巡らし、いろいろと勘繰ったりするが、
彼らは人間が思っている以上に、
聡明で愛情深く、純粋な心をもっているのだ。


犬というのは、
「自分を可愛がってくれる人、
 本当に愛してくれる人がたった一人いれば幸せ。
 例えその人がいなくなっても、
 強い絆で結ばれた愛が、心の中にありさえすれば幸せ。」
と、努めてそう思うようにしているが、
正直に云うと、無理なはなしとはいえ上野氏には永く生きていて欲しかった。

ハチのことを知った斎藤弘吉氏の寄稿が新聞に載り、
広く知れ渡るようになって以降、
銅像が立てられ、後世まで語り継がれることとなったハチ。
1987 年には「ハチ公物語」ができ、
このたびの「 HACHI 約束の犬」へとつながっている。
ハチの飼い主を待ち続けた健気な姿は、
信頼すること、愛することの尊さを象徴し、
純粋で普遍的な物語として世界中に届けられた。

それでも私は、この物語を知らない方が良かったと思ってしまう。
上野氏が長命で、ずっとハチを可愛がることができていれば、
この物語は最初から存在しない。私はその方が良かった。

「強い絆で結ばれた愛が、
 心の中にありさえすれば幸せなのかもしれない」が、
愛する人にそばにいてもらうことほど、犬にとって幸せなことはない。

ハチという、1 頭の秋田犬が本当に望んだ幸せを思わずにいられない。
Posted by マキティ at 2009年08月21日 21:47
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マキティさん、こんにちは。
お返事嬉しくて再び書き込んじゃいました!すみません。

ハチ公物語が存在しない方が良かった・・・激しく同感です!!
犬はどうしてそんなに純粋に人間という別の生き物を、信頼し傍に寄り添い愛しい眼差しで見つめてくれるのでしょう。ハチはずっと教授に会いたかったのだと私も思います!

それと、リンダちゃん回復に向かわれているようで良かったですね。
犬の椎間板ヘルニアは非常に多いそうですね。
我が家の愛犬も老齢性とも言えるヘルニアと診断されましたが、まだレベル1なのでトボトボですが歩くことはできます。

また美姫ちゃんの記事でも書き込みさせて頂きます!
Posted by LOVEMIKI at 2009年08月24日 11:49
LOVEMIKI さん、こんにちは。

ご賛同下さりありがとうございます。
ハチの物語が日本だけでなく、世界の人々にも伝えられ、
信頼し合うことの大切さ、無償の愛の美しさに感動の輪が広がるのは、
たいへん素晴らしいことなのですが、
実在した 1 頭の犬、ハチの心情を慮ると切ないです。
映画に登場していた「 HACHI 」の顔を思い出すだけで、
胸がいっぱいになって、いまだに涙が出てきてしまいます。
上野教授を信じ、愛し、会いたくて会いたくて待ち続けたハチの一生が、
あまりに切なくて、愛おしくて・・。

ところで!
リンダはゆっくりと快方に向かっているようです。
レベル 3 だったのですが、今では 2 くらいでしょうか。
最近では犬・猫も寿命が延びてきていますし、
LOVEMIKI さんのワンちゃんも、13 歳ということですが、
まだまだこれからですよ。ご長寿犬となられるよう、お祈りしています。
Posted by マキティ at 2009年08月24日 19:54
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